新型コロナウィルスで注目?『ナッジ』とは?アメリカ、トレーダージョーズはいち早く採用。

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新型コロナウィルスで俳優の岡江久美子さんが亡くなったという残念なニュースがありました。ここアメリカ、テキサス州はこれから感染が爆発すると予想されていましたが意外にも落ち着いています。

日本で外出自粛要請が出ている中で消費者に行動を促す行動経済学の理論、“ナッジ”が日本で広がっているとの記事をみかけました。

お店のレジに並ぶ際、前の人と一定の距離を保つように、足元に立ち位置を表すテープが貼られている、やつです。
 

アメリカの大人気食料品店『トレーダージョーズ』はいち早くこれを取り入れていました。

今回はこれが、アメリカの各州でどれだけ効果があるのかについて現地情報を書いていきたいと思います。
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ナッジとは

環境省のサイトによると、ナッジとは
「人々が自分自身にとってより良い選択を自発的に取れるように手助けする政策手法」
とあります。

 

英語の『nudge(人の注意を引くため肘で軽くつつく)』から転じてちょっとしたきっかけを与えることで消費者の行動を促す行動理論。

 

「ナッジ」理論の提唱者はシカゴ大学のリチャード・セイラー教授。2017年に教授がノーベル経済学賞受賞したことがきっかけで、世界中で注目を集めることになりました。

 

 
選択の自由を残し、費用対効果の高いことを特徴として、欧米をはじめ世界の200を超える組織が、あらゆる政策領域(SDGs & Beyond)に行動インサイトを活用
 

ここに省エネナッジの例がとてもわかりやすく説明されています。

 

例えば先月の利用料を他の世帯との比較【同調性・社会規範】

省エネ上手な家庭:3030kwh

お客様:4191kwh

よくある家庭:5352kwh

 

これまでの使用量と比較【損失回避性】

損失を強調したメッセージ”過去の使用量はよくある家庭より上回っている”

「ものを得る喜びよりも失う痛みのほうが強く感じる」という行動経済学の理論を応用。

 

これが『ナッジ』と呼ばれることは私は知らなかったのですが、この上の省エネの例を見て、もしかして私の電気会社が送ってくるメールもこれと同じだったのかもと思いました。

 

私はアメリカで今『4Change energy』という電気会社と契約をしています。インターネットと違って電気会社の選択は割と多いですが、今のところ3年以上ここを使ってます。

 

で、この会社(だけじゃないと思いますが)毎週メールで先週との使用量の比較のグラフを送ってくれるんですね。

 

例えば前回のメールではこんな感じでした。


先週、今週の比較に加えて、この使用量から推測される1か月の使用量と料金です。

これを数字とグラフにして毎週送ってくれています。

 

ほとんどの会社が送ってくるDMは広告ばっかで毎日のように送ってくる会社もある中、4change energyのメールは省エネしなきゃ、とかの目安になるのでとてもありがたいです。

 

使用キロワット数だけ比較だと、あまり響かないですが『料金はいくらです』と書かれると途端に響きますよね笑

 

また、AT&Tのように月の最後に料金を確認すると謎の料金がのっかってたり、という不透明なところがないのも良いです。

 

新型コロナウィルスの感染でナッジが活用されたトレーダージョーズ


最近、日本でも新型コロナウィルス対策として採用されている、他人との距離を保つため床に貼られたテープ。

 

これはアメリカのスーパーは全部採用しているのではないかと思います。

その中でも、一番と言っていいほど早かったんじゃないかと思うのが『トレーダージョーズ』

 

アメリカで絶大な人気を誇るオーガニック食料品店です。NYではいつ行ってもレジに行列ができているんですが、大人気なゆえに新型コロナでも早くから感染者を出してしまったんですね。

 

その後、従業員に感染者が出たといって一時閉鎖される店舗が数店舗出てきてしまいました。

 

私が3月17日にトレジョに行って、見たことないような光景を見た記事を以前に書いたんですが、その後しばらく外出を控え、31日に再びトレジョに行ったところ、17日の時点とだいぶ変化が。

 

17日の段階ではなかった『入場制限』ができていました。

 


店舗に入るまで6フィート(180㎝)の距離を保って並ばなくてはいけません。店内にいる客数をコントロールするため、入り口に従業員(クルーと呼ばれる)が一人立っていて、入っていいよと指示します。

 

カートは毎回必ず消毒。

 

狭い店内に入るとこんな大きな看板が。

 


17日の時には買い占めしただろうという空っぽな店内でしたが、この買い占め対策として個数制限ができていました。すべてのアイテムは2個まで。

 

ペーパータオルやトイレットペーパーは品切れ続出だったので、一人1個まで。

 

 

そして、トレジョが一番気を遣っているなと感じたのは、『レジの支払いもギリギリまで離れている』ようにクルーが誘導していたことでした。

 


これが私のよく行くトレジョのレジの様子。6フィートの青い線の枠内に1人、という決まりです。

 

先頭の青枠に、レジで支払いをする客が待機。この時はトレジョの名物の『エコバッグ』が『使用禁止』になっていたので、紙袋に食料品を詰め終わった後に『どうぞ』と言われて、レジでカード払いするという流れになっていました。

 

徹底的に6フィートを保つという感じです。

 

その後、ホールフーズでもこのラインが貼られていました。

 

4月始め頃のcostcoでもラインが出現してました。3月の時はトイレットペーパー類を買いに来た客が開店前に行列を作っていましたが、私と他数人しかマスクをしておらず、ラインもなかったんですが、この時はほとんどの客がマスクを着用してました。

 

大型スーパーウォルマートでは片方のドアが閉鎖。一つのドアにもテーマパークの入口のようにテープで道が作られ、警備員が待機しています。

 


 

セルフレジがあるところは良いですが、スタッフが対応するレジにバリアができてるスーパーもありました。31日のトレジョではなかったですが、最近行ったホールフーズではバリアがありました。

 


こんな感じで、今はバリアを作るお店が増えています。

 

ちなみに、トレジョは、感染すると重症化しやすいお年寄り限定の時間を作っています。

 


開店と閉店が1時間ずつ短縮。営業時間より2時間短縮されて、朝9時から7時の営業になってますが、実際は朝の8時から9時までは60歳以上のお客さんのみが入れるシニアの時間帯です。

 

他のスーパーでもシニア時間が設けられてます。

これって日本でもあるんでしょうか。

もしもなければ作った方が良いのではないかと思います。

 

ナッジは今までにどこで採用されてきたのか


道路やお店の中に書いてある足跡マーク。よく見かけますよね。その位置で止まるように行動を促しているこれもナッジの一例だそう。

 

ネットで買い物をするとき、最後の方に『このショップをお気に入りに登録』『お得情報のメルマガを受け取る』などにチェックが入っていて、消費者がそのチェックを外すことができる(選択できる)ようになっているのもそう。

 

また、ネットのニュースサイトなどで『〇〇からの新着記事の通知を受ける』というポップアップが出てきて選択できるようになっている、、

 

 

日本だと2013年におこなわれたサッカー・ワールドカップ日本代表戦の際、渋谷のスクランブル交差点で、DJポリスが日本代表サポーターを「12番目の選手」として誘導したことで安全に混雑を緩和できたできたり、放置自転車をなくすために『ここは自転車の捨て場です。ご自由にお持ちください』と張り紙を貼ると放置自転車がなくなったなどの例があるそうです。

 

そう考えると結構いろんなところで見かけてるのかもしれないですね。

 

「ナッジ理論」は、2017年にアメリカで生まれた行動経済学の新しい理論なんだそうですが、もっと前からこういう例はあったんですよね。アメリカではどんな例があるのか調べてみました。

 

世界で行われたナッジの例

便器のハエ


一番有名な例は、1990年代にオランダのアムステルダム・スキポール空港で実施された、トイレのハエ。空港のデザイナーが男子トイレを清潔に保つために考案したとのこと。便器の中にハエを描いておくことで、そのハエめがけて用を足す人が増えるのか、飛び散りが80%減ったとのことです。

男性じゃないからわからないですが、このハエを落とそうという心理になるのかな…?

 

スピードカメラで賞金?


めちゃくちゃいい案!と思ったのがこれです。2010年にフォルクスワーゲンが『Fun Theory Contest』というコンテストを行った際に選ばれたのが、ケヴィン・リチャードソンさんの『スピードカメラロト』という案。

 

これは、交差点に設置されたスピードカメラに捕まった違反者の罰金が、スピードを守っていた運転手に賞金として与えられるというもの。

 

 

スウェーデンのストックホルムで試験的に採用されたそうです。

結果は、24,857台の車が通過し、平均スピードは時速32kmから時速25kmになったんだそう!

なんか人間って単純な生き物ですね笑

 

タバコの吸い殻で投票


サッカーファンなら絶対投票してしまう、道端のポイ捨てをなくす『タバコの吸い殻投票』イギリスで行われたそうで、『世界一のサッカープレーヤーは誰?』の質問に『ロナルド』か『メッシ』の投票ができる画期的な灰皿。

 

これはすごいアイデア。他にもテニスやF1、クリケット版ができ、ポイ捨ては46%減少したそう。

アメリカでもこの案が採用され、人通りの多いストリートでは74%も減少したところがあったのだとか。

スポーツファンが多いことも影響してそうですね。

 

クラクションを鳴らすたび絵文字が…


インドに行ったことがある人は、インドで運転するのは怖いと感じたんではないでしょうか。私も過去にインドに3か月くらい住んでいたんですが、今でもインドのクラクションだらけで車線無視した蛇行運転、突然牛が道路の真ん中を歩いてるのにでくわす…などの光景を覚えています。

 

そんなクラクション音だらけのインドでこんな実験が行われたそう。

それが、クラクションを鳴らすたびに、絵文字のついたボタンが赤く光ってビーッビーッと鳴り続けるため毎回それを押さなくてはいけなくなるというもの。

6か月間この実験をした結果は、なんと61%もクラクションノイズの軽減につながったのだとか。

ちなみに、この間で、この絵文字に気を取られて事故に遭うということは1件もなかったそうです。

 

 

昇り降りが楽しい階段


ストックホルムの地下鉄には、エスカレーターが隣にあるのに階段を歩きたくなってしまうピアノの階段があるそう。

スウェーデンで始まったこのピアノ階段はYouTubeでバイラルになり、ミラノやメルボルン、イスタンブールやオークランドなど世界中で採用されることになったということです。

 

ただ、演奏しようと大ジャンプしてこけたりすることないのかなーという余計な心配もありますが、たぶん大丈夫でしょう。

 

効果を発揮しているのか

この6フィートライン、NYのトレジョではお客さんも始めは無視していたそうですが、あちこちで採用されている今、みんなこれを守っています。(少なくとも私の地域では)

 

効果があるのか…は、データがないのでわからないですが、心理的な効果はかなりあると思います。

このテープがあることで絶対に意識してしまうし、マスクをする人も増えたことで、ヤバいな…という空気が流れているのは間違いありません。

 

ちなみにテキサス州では4/23お昼の段階で感染者が20,196人です。先週くらいには、テキサス州で感染が爆発するのは今月後半、しかも22日だと予測されてました。

 

でも今のところ、ここ2週間くらい感染者の増え方が緩やかで、激増はしていないのでsocial distancingはかなり効果があるようです。

それにテープで貼られたこのラインによる心理的効果も相当あるのではないでしょうか。

 

 

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